骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
近年、高齢者の骨粗鬆症による脆弱性骨折が増加しております。脆弱性骨折の予防のため、骨粗鬆症の診断、治療は非常に重要となっております。また、人工関節手術を行う上でも、骨粗鬆症の治療により人工関節がより長持ちしやすいとされています。
当院ではDXA法による骨密度測定により正確に骨粗鬆症の診断を行い、治療の対象となる患者さんに対しては、詳細な血液検査を行った上で、幾多の治療薬の中からその患者さんに最も合った薬剤による治療を行います。

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは
「骨量の低下と、骨の微細構造の劣化により骨折の危険が増した状態」とされています。
近年、超高齢社会の日本においては骨粗鬆症に起因する大腿骨骨折や脊椎椎体骨折などの脆弱性骨折が多発しています。骨脆弱性による骨折は寝たきり生活の原因となり、生命予後に関与することが判明しており、見過ごすことのできない病気です。
実際に運動器の障害は要介護原因の4分の1を占め最多となっており、骨粗鬆症が高齢者の日常生活に 与える影響はがんと同等であるとされています。
健康寿命(怪我なく日常生活に支障のない期間)と生命の寿命である平均寿命とは約10年の差があります。そのためこの健康寿命を伸ばし充実した老後を送っていただく必要があります。
骨粗鬆症の症状
多くが無症状のため、現在症状がなくてもいずれ腰痛や骨折を起こす危険が大きいと言われています。 腰痛や背中が曲がった、若い時に比べ身長が2cm以上低下しているなどの症状を認めたら注意が必要です。
骨粗鬆症の頻度
60代女性の3人に 1人、70才代女性の2人に1人は骨粗鬆症にかかっているとされています。日本の総人口の10%弱、すなわち約1100万人が骨粗鬆症の可能性があり、骨粗鬆症予備軍まで含めると2,000万人に達すると指摘されています。
骨粗鬆症になりやすい人(危険因子)
高齢、女性はともに重要な危険因子です。家族(特に親)に骨粗鬆症が原因で太ももの付け根などを骨折した人がいる場合、骨折のリスクが高くなります。
ステロイド薬などによる治療歴は骨密度を低下させ骨折のリスクを高めます。
一度、脆弱性骨折したことがある人は他の場所を骨折するリスクが高くなります。
一日2単位(日本酒2合やビール1Lなど)以上の飲酒は骨折のリスクを高めます。
現在喫煙している人はしていない人に比べて骨折のリスクが高くなります。
その他、糖尿病・関節リウマチ・透析・腎機能障害・胃切除後・甲状腺機能亢進症・神経性食欲不振(過度なダイエット、拒食症など)なども骨粗鬆症の危険因子となります。
骨粗鬆症の検査
近年、二重エネルギーX線吸収法(DXA)などで精密に骨密度が測定できるようになっています。その他、背骨のレントゲン撮影による評価、骨代謝マーカーの測定などがあります。
骨粗鬆症の予防

バランスの食事とれた食事
骨に作用する主な栄養素:ビタミンK、ビタミンD、カルシウム、亜鉛、その他、野菜や果物、タンパク質などさまざまな栄養素をバランス良く摂ることが基本。
必須栄養素を充足するため三度の食事は大切です。骨を造るのに重要なビタミンKを摂ることや、カルシウムの吸収をよくするためにビタミンDを摂ることが大切です。
運動(週3回以上)
転倒予防効果、骨密度増加効果が期待できます。主によく歩くことが大切ですが、積極的な階段昇降、しゃがみ込み運動(スクワット)、ダンスなどのリズム運動なども効果的です。
日光浴(一日30分)
カルシウムの吸収に欠かせない活性型のビタミンDは、人間の皮膚が日光の紫外線を浴びることでつくられます。定期的な検診、骨密度測定による早期発見も重要です。
骨粗鬆症の治療
骨には常に古い骨を壊し、新しい骨を作る新陳代謝があります。骨粗鬆症の患者さんはこのバランスが崩れています。
骨が壊れるのを防ぐ薬(骨吸収抑制剤)
ビスホスホネート薬
骨を壊す細胞の働きを抑えて、骨を壊れにくくします。選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:サーム)
骨に対して女性ホルモンと同様に作用し、骨のカルシウムが体内に溶け出すのを抑えます。カルシトニン薬
痛みを和らげる作用と、骨のカルシウムが体内に溶け出すのを抑える作用があります。ヒト型抗 RANKL モノクローナル抗体
骨の成分を溶かす体内の働きを抑え、骨を壊れにくくします。ヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体
骨破壊を抑制しかつ骨形成を促す作用があります。
骨を造る薬(骨形成促進剤)
- 副甲状腺ホルモン薬:骨の新陳代謝を促し、新たな骨を造る作用があります。
そのほかの薬
カルシウム薬
骨量の減少を予防します。カルシウム摂取量の少ない場合に投与します。活性型ビタミンD3薬
腸からのカルシウム吸収を助け、骨を強くします。ビタミンK2 薬
骨が造られるのを助けます。