膝関節疾患
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症とは膝関節が痛くなる代表的な病気です。膝関節の軟骨が、加齢による摩耗や怪我による軟骨損傷によって、長期間かけて徐々にすり減っていくことが原因です。一度損傷した軟骨は、回復しないため、痛みが徐々に増加する傾向にあります。また、脚が「O脚」になると膝の内側に負担がかかり、痛みが生じやすくなります(逆に「X脚」では膝の外側に負担がかかります)。50代~60代くらいから発症し始め、女性のほうが男性よりも1.5~2倍くらい多い傾向にあります。また、日頃から膝を酷使するお仕事に就いている方は、性別問わず30代や40代でも発症することがあります。

日常生活への注意
膝関節に無理な負担をかけないことがとても大切です。床にすわる、布団に寝るなどの和式生活よりも、ベッド・椅子・洋式トイレなどを使用する洋式生活が望ましく、膝関節に負担がかかる激しい運動、重労働、長時間の立位、正座などはなるべく避けるようにしましょう。靴は、ハイヒールや、底の硬いサンダルを避け、なるべくクッション性があるスニーカーを履くようにしましょう。
体重管理は非常に重要です。体重が重いほど、それだけ膝関節にかかる負担が増えて、膝関節の痛みが悪化する場合があります。適正な体重を保つことが大切です。
歩くときに痛みが出る場合には、杖を使用することで膝関節にかかる負担を軽くすることができます。杖を使用する時は、痛みのある足とは反対の手に持って使用し、痛い側の足が地面に着く時に、杖を一緒につきます。また、足底板やサポーターなどを使用することで、膝関節にかかる負担を減らす方法もあります。
運動療法
医学的にも運動療法は非常に大切だとわかっています。膝関節周囲の筋肉のストレッチ、筋力トレーニング(大腿四頭筋訓練)をすることで、変形性膝関節症の進行を遅らせる効果があります。ただし、激しい運動は症状を悪化させる場合があります。無理のないよう、医師や理学療法士と相談しながら行いましょう。
薬物療法
薬物療法も効果的です。膝関節の痛みが強い時は、消炎鎮痛剤、ヒアルロン酸注射などで対処します。鎮痛目的で使われますが、あくまで対症療法ですので、変形性膝関節症が治るわけではありません。しかも、消炎鎮痛剤を長期に内服することにより胃腸障害や肝臓・腎臓障害などの副作用を引き起こす危険性があります。また一時的に痛みがとれて無理をすると逆に変形性膝関節症が進行してしまいます。薬物療法では薬を適切なタイミングで使用することがとても重要です。
手術療法
変形性膝関節症の患者さんで保存療法を行っても膝関節の痛みが軽減しない場合や、病状がかなり進行している場合などには手術を検討します。
手術を行うかどうかは、膝関節痛の程度、日常生活の不便さ、年齢、仕事の内容など、さまざまな要素を総合的に考慮して決定します。
人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty, TKA)について
人工膝関節全置換術とは、すり減った軟骨と傷んだ骨と半月板を切除して金属やプラスチックでできた人工の関節に置き換える手術です。人工膝関節によって滑らかな膝関節の動きが再現できます。
痛みの原因となるすり減った軟骨と傷んだ骨が人工物に置き換えられて痛みがなくなることで、日常の動作が楽になることが期待できます。
近年の人工膝関節では、人工関節自体の性能が以前と比べ格段に良くなっていることにより耐久性が改善され、20~30年以上機能することが予想されています。
また、人工膝関節全置換術に年齢制限はなく、高齢であっても体力さえあれば年齢が90代でも手術を受けることは可能です。この手術によって、日常の生活における動作が楽になることが期待できます。
